トップシークレット☆後日談 東京~神戸 新婚ラプソディ

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بواسطة:  日暮ミミ♪تم تحديثه الآن
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知り合ってから20ヶ月。紆余曲折を経て無事にゴールインした篠沢絢乃・貢夫妻。今日はそんな二人の結婚式&結婚披露パーティー! 絢乃が会長を務める大財閥〈篠沢グループ〉の中枢・篠沢商事の社員、絢乃の親友たち、二人の親族……。たくさんの人たちが、8歳差の年の差カップルの結婚をお祝いに来てくれた。 結婚披露パーティーが終わり、二人は四泊五日の新婚旅行へ。行先は海外ではなく、兵庫県の神戸・淡路島方面。 彼女たちはそこで、一年前に出張で訊ねた神戸支社の川元支社長と再会。 旅先では仕事のことを忘れ、毎日イチャイチャする二人なのだった……。 『トップシークレット☆』のその後を描いた、甘々アフターストーリー♡

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الفصل الأول

ブーケは誰の手に? PAGE1

 ――六月。梅雨入り後の貴重な晴天の中、わたし・篠沢しのざわあやと夫・みつぐの結婚式が、こことうきょうしん宿じゅくにある結婚式場で執り行われていた。

 ここはわたしが会長を務める大財閥〈篠沢グループ〉の所有する式場で、大きなシティホテルも隣接している。

 わたしたち夫婦も、昨日婚姻届を提出してきたその足でそのホテルにチェックインし、今日は朝からこの式場に来て、それぞれ式の準備を始めた。そして午後の結婚披露パーティーが終わると、そのまま新婚旅行のために品川しながわ駅へ向かう予定にしている。行先は海外ではなく、新幹線に乗ってひょう県のこうあわしま方面だ。

 ちなみに、貢は篠沢家の入り婿むこになってくれた。わたしが両親の一人娘であり、また先代会長だった亡き父の後継者でもあったためである。

 彼はわたしの初恋の相手だった。二年前の秋、当時十七歳だったわたしは当時は総務課の平社員だった八歳年上の彼に生まれて初めての恋をしたのだ。

 それからは色々なことがあり、わたしが会長に就任してからは、彼は会長付秘書としてわたしのことを公私ともに支え続けてくれた。

 わたしたちは昨年のバレンタインデーを機に両想いとなり、交際をスタート。その後、彼が過去に抱えた女性へのトラウマも二人で乗り越え、今日ここで晴れて夫婦となれたのだ。

   * * * *

「――新郎・篠沢貢。あなたはめる時も、すこやかなる時も、妻・絢乃を愛しみ、うやまい、共に歩んでいくことを誓いますか?」

 式は慣例どおりの式順で、そして和やかなムードの中進行していく。

「誓います」

 神父さんの前でそうキッパリ宣言した彼を、わたしは頼もしく思った。衣装選びの時には、わたし以上にゴネて担当スタッフを困らせていたけれど、その末に決まった白のタキシードが細マッチョの体によく似合っている。今は辞めてしまったらしいけれど、昨年夏からキックボクシングを習っていたのだそう。

「新婦・篠沢絢乃。あなたは病める時も、健やかなる時も、夫・貢を愛しみ、敬い、共に支え合うことを誓いますか?」

 実は神父さんのこの言葉は、一般的なものにじゃっかんのアレンジが加えられている。この式場の持ち主(つまり、わたしのことだ)の結婚式なので、特別にそうなったらしいと、わたしたちの式を担当してくれた女性ウェディングプランナーから聞いた。

「誓います」

 わたしも堂々と、神父さんと彼の前で宣言した。

 この結婚式はきっと、天国の父も見てくれている。母もわたしと彼の恋の行方を温かく見守っていてくれた。わたしは絶対に、彼と幸せになる、……ううん、わたしが彼を幸せにする! そう誓ったのだ。

 

 わたしたちは、宣誓せんせい台に載せられている結婚宣誓書にサインをした。

 その後、指輪の交換をして――。このプラチナ製の、シンプルながら遊び心のあるデザインの結婚指輪は、四月に二人で選んだものだ。

 わたしの指に指輪をはめるのはこれが二度目なのに、貢の手は小刻みに震えている。横でわたしのブーケとショートグローブを預かってくれているかいぞえ人の女性も、ハラハラしながら見ていた。

「……ねえ貢、もしかして緊張してる?」

 周りには聞こえないように小声で訊いてみると、彼も小さくコクンと頷いた。

「こういう時は、〝カボチャ〟じゃなかったっけ?」

「……はい?」

 わたしのアドバイスに、彼は目が点になった。

貴方あなたが教えてくれたんだよ。覚えてないの? 緊張してる時のおまじない」

「……ああ」

 彼もやっと思い出してくれたらしい。これは十七ヶ月前、わたしが会長就任のスピーチをする前に、緊張していたわたしに彼が教えてくれたおまじないだった。

「どう? 緊張ほぐれた?」

 彼の震えが止まったようなので、わたしはもう一度こっそり訊いてみた。

「はい。おかげで、恥をかかずに済みました。ありがとうございます」

 ――こうして、無事にわたしの指にプラチナリングが収まった。

 今度はわたしが、彼に指輪をはめる番。男性の指にリングをはめることなんてもちろん初めてのことだったので、さっきの彼の緊張も決して他人ひとごとではなかった。

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ブーケは誰の手に? PAGE1
 ――六月。梅雨入り後の貴重な晴天の中、わたし・篠沢絢乃と夫・貢の結婚式が、ここ東京は新宿にある結婚式場で執り行われていた。 ここはわたしが会長を務める大財閥〈篠沢グループ〉の所有する式場で、大きなシティホテルも隣接している。 わたしたち夫婦も、昨日婚姻届を提出してきたその足でそのホテルにチェックインし、今日は朝からこの式場に来て、それぞれ式の準備を始めた。そして午後の結婚披露パーティーが終わると、そのまま新婚旅行のために品川駅へ向かう予定にしている。行先は海外ではなく、新幹線に乗って兵庫県の神戸・淡路島方面だ。 ちなみに、貢は篠沢家の入り婿になってくれた。わたしが両親の一人娘であり、また先代会長だった亡き父の後継者でもあったためである。 彼はわたしの初恋の相手だった。二年前の秋、当時十七歳だったわたしは当時は総務課の平社員だった八歳年上の彼に生まれて初めての恋をしたのだ。 それからは色々なことがあり、わたしが会長に就任してからは、彼は会長付秘書としてわたしのことを公私ともに支え続けてくれた。  わたしたちは昨年のバレンタインデーを機に両想いとなり、交際をスタート。その後、彼が過去に抱えた女性へのトラウマも二人で乗り越え、今日ここで晴れて夫婦となれたのだ。    * * * * 「――新郎・篠沢貢。あなたは病める時も、健やかなる時も、妻・絢乃を愛しみ、敬い、共に歩んでいくことを誓いますか?」 式は慣例どおりの式順で、そして和やかなムードの中進行していく。「誓います」 神父さんの前でそうキッパリ宣言した彼を、わたしは頼もしく思った。衣装選びの時には、わたし以上にゴネて担当スタッフを困らせていたけれど、その末に決まった白のタキシードが細マッチョの体によく似合っている。今は辞めてしまったらしいけれど、昨年夏からキックボクシングを習っていたのだそう。「新婦・篠沢絢乃。あなたは病める時も、健やかなる時も、夫・貢を愛しみ、敬い、共に支え合うことを誓いますか?」 実は神父さんのこの言葉は、一般的なものに若干のアレンジが加えられて
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ブーケは誰の手に? PAGE2
 わたしは彼の左手を取ると、ふぅっと大きく深呼吸をして台座から指輪を取り上げた。「……絢乃さん、大丈夫ですか?」 わたしの緊張を読み取ったらしい彼が、優しくわたしを小声で気遣ってくれる。わたしは「大丈夫」とだけ答え、ちょっとつっかえながらもどうにか彼に指輪をはめることに成功した。「――これで両人は、真実の夫婦となりました。では最後に、誓いの口付けを」 神父さんからそう促され、わたしたちは誓いのキスを交わす。彼からのキスはいつも優しいから、わたしは大好きだ。結婚式という特別な舞台ではあるけれど、今日もそれは普段と変わらない。 キスを終えたわたしたちは、どちらも幸せいっぱいの笑顔になった。  「絢乃、おめでと~! お幸せに!」「絢乃タン、おめでと!」「いよっ、ご両人! おめでとう!」 チャペルの参列席からは親友の中川里歩・阿佐間唯ちゃん・そして貢のお兄さまの桐島悠さんのお祝いの言葉が聞こえてくる。ちなみに「ご両人」とはやし立てたのがお義兄さまで、貢はそれを聞いた途端に仏頂面になった。「兄貴のヤツ……! 恥ずかしいからやめろっての。――絢乃さん、すみません」 こんなところでもご兄弟の仲のよさを垣間見ることができて、わたしは思わず笑ってしまった。「えっ、なんで笑うんですか!? 絢乃さん!?」「ゴメン……、フフフっ」 目を剥いて抗議する彼に、わたしは謝りながらもまだ笑っていた。    * * * *  ――引き続き晴天のチャペルの外、わたしたちはライスシャワーの中、参列者のみんなからの祝福を受けた。「会長、桐島くん、おめでとうございます!」「絢乃、お幸せに!」 会社の社員や役員たち、高校時代の友達、貢のご家族。そしてなんと、アメリカに住むわたしの父方の伯父やいとこたちまで来てくれた。「みんな、ありがとう!」「ありがとうございます!」 わたしたち夫婦は、感謝の気持ちを込めてみんなに深々とお辞儀をした。 ――さて、ここからはこの結婚式のメインイベントだ。わたしは貢と軽く頷き合うと、くるりとみんなに背中を向けた。「じゃあ、ブーケ行きま~すっ!」 そう高らかに宣言して、わたしは白いバラや大きなカサブランカのプリザー
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ブーケは誰の手に? PAGE3
「パパもきっと、ママの幸せを願ってくれてるはずだから。わたしには貢がいるからもう大丈夫! だからママ、もう自分の幸せを見つけて。ね?」「絢乃……」 わたしは母の側へ歩み寄り、母を抱きしめた。「……そうね。今すぐにはムリかもしれないけど……、もしこの先いい男性が現れたら、考えてみようかしら。――貢くん」「……はい」「絢乃のこと、どうかよろしくお願いします。これからも、この子をしっかり支えてあげてね」「はい! 任せて下さい!」 貢が力強く頷いた。一年ほど前には、この人がわたしと住む世界が違うことを言い訳にして弱気になっていたと思うと、何だか不思議な気持ちだ。「――あ~あ、ブーケ取りたかったなぁ。でも、おばさまがキャッチしたならしょうがないかー」 ブーケを取り損ねた里歩は、少しだけ口を尖らせている。「よく言うよ。『あたしにはまだ結婚なんて早すぎるし~』とか言ってたのはどこの誰だったっけ?」「……あれ? そんなこと言ってたっけ」 わたしがツッコむと、彼女は思いっきりすっとぼけてくれた。彼女は本当に憎めない子だ。横では唯ちゃんがクックッと笑うのを必死にこらえている。「――私もブーケ、欲しかったですけど……。前田くんとの交際はともかく、当分は仕事が私の恋人ですから!」「おいおい、小川」 小川さんの当の〝恋人〟である前田さんが、彼女の発言を受けて呆れたように言った。「小川さん、仕事とプライベートは分けなきゃダメだよ。じゃないと、前田さんに愛想尽かされちゃうから」「俺は愛想なんか尽かしません!」 彼女は以前、相手の名前は伏せるけれど「永遠に叶わない恋」をしていた。それは、わたしも決して部外者ではなく――おっと、これ以上は彼女の名誉のためにも言わないでおこう。そんな傷心の彼女のことを一途に想い続けていたのが、彼女と同期入社だった前田さんだったのだ。 二人の恋のお膳立てをしたのが、他でもないわたしと貢だった。去年の夏のことである。「前田さん、めげないで!」「はいっ!」 この二人もきっと大丈夫。小川さんには、つらい恋をしていた分、うんと幸せになってほしい。「――では、この後みなさまにはガーデンレストランに移動して頂き、結婚披露パーティーに移らせて頂きます。新郎新婦はお色直しのため、一旦控室へお戻り頂きますので、少々お時間を頂戴いた
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楽しい祝宴 PAGE1
 ――控室へ戻ったわたしは、ヘアスタイルやメイク・髪飾りはそのままに、淡いピンク色のオフショルダーのロングドレスに着替えさせてもらい、去年の誕生日に貢からプレゼントされたハートのネックレスを着けて、お色直しが完了した。 隣の控室から出てきた貢は、上下白のタキシードから上下グレーのタキシードに着替え、ループタイは紺色になっている。  黒はイヤなのにグレーはいいのか、とわたしはツッコみたくなったけれど、口に出して言ったら彼がいじけてしまいそうなのでやめておいた。  せっかくのおめでたい席だし、グレーも彼によく似合っていてステキだから……、とか言ったらノロケにしか聞こえないかも。「――では、会場へ参りましょうね」 介添人の女性に先導され、わたしたち夫婦は結婚披露パーティーの会場である敷地内のガーデンレストランへ向かった。    * * * * 「――皆さま、お待たせ致しました! ただいまより、お色直しを終えた新郎新婦が入場致します! 盛大な拍手でお迎え下さい!」 司会者の紹介アナウンスの後、わたしと貢は温かい拍手に迎えられながら仲よく入場した。幸せいっぱいの笑顔でお辞儀をすると、これまた盛大な拍手が鳴り響く。 着席したわたしたちは、会場内をぐるりと見回した。レストランの真ん中にビュッフェテーブルが設置されていて、たくさんの洋食メニューがズラリと並べられている。デザートのコーナーもあり、これらのお料理はすべてわたしと彼で選んだメニューばかりだった。 まだ昼間ということもあり、このパーティーではアルコール類は出されていない。わたしの友人たちもわたし自身も未成年であり、貢が下戸だからでもあるのだけれど。 招待客の中には、わたしの父方の伯父である井上の伯父さまとその家族もいる。 わたしがまだ中学生だった頃にアメリカで事業を始めた伯父は、家族も一緒にそのままずっとアメリカで暮らしている。父の葬儀の時には残念ながら帰国できなかったけれど、今回は一家で帰国して出席してくれたのだ。  父の二歳年上で、顔立ちや雰囲気も父によく似ている伯父。わたしは彼がこの場で、姪であるわたしの結婚を祝ってくれていることが、本当に嬉しかった。 貢のご家族も、四人揃って出席して下さっている。お義兄さまの悠さんは、初めて見る少し着崩しているスーツ姿が〝ちょっとヤンチャ
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楽しい祝宴 PAGE2
「……絢乃ちゃん、お父さんの葬儀に参列できなくてすまなかったね。伯父さんは伯父さんで、海の向こうでお父さんの冥福を祈っていたんだよ。だから許してくれるかね?」 幸せな日なのに、父のことを思い出すと泣き出しそうだ。でも、それはきっと伯父も同じ。ううん、血のつながった弟を亡くした伯父はもっとつらかったはずだ。「もちろんだよ、伯父さま。だって、わたしやママより伯父さまの悲しみの方が大きかったはずだもん。だから、今日こうしてご家族総出でお祝いに来てくれただけで十分嬉しいよ。みんなによろしくね」 伯父は「ああ、分かった」と言って席に戻っていき、お義父さまと何やら話し始めた。「貢……、ゴメンね。こんなにおめでたい席なのに、なんかしんみりした空気になっちゃって」「いえ、お気になさらず。僕は分かってますから」 この一年半ほどの間、彼はちゃんと見てくれていたのだ。わたしが仕事に打ち込むことで、必死に父を失った悲しみを乗り越えようとしていたことを。「ありがと。やっぱりわたし、貴方を好きになってよかった」 今日ほど、そう実感した日はなかったと思う。「――みなさま、お飲み物はお手元にございますでしょうか? それでは、新郎新婦の仲人を務められました篠沢商事社長・村上豪さまより、乾杯の音頭をお取り頂きたいと思います」 わたしたち夫婦、親族一同、そして招待客がみんな各々好みのドリンクを取りに行ったところで、司会者の男性のアナウンスが聞こえた。 黒のモーニング姿でバッチリきめた村上さんが、ミネラルウォーター入りのグラスを手にスタンドマイクの前に立つ。「絢乃会長、桐島くん、本日は本当におめでとうございます。どうぞ、末永くお幸せに。――みなさん、ソフトドリンクで申し訳ありませんが、お二人の結婚を祝して、カンパーイ!」「「「カンパーイ!!」」」 村上さんは元々長いスピーチが苦手なので、こういう席で乾杯の音頭を取ってもらうにはもってこいの人だ。あまりにも長々とスピーチをされてしまうと場の空気も白けるし、せっかく選んだ美味しいお料理も冷めて台無しになってしまうから。 わたしと貢は、アップルサイダーを飲んでいた。その時、会場内にキャスター付きの台座に載せられた三段のウェディングケーキが運ばれてく
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楽しい祝宴 PAGE3
「また兄貴は……、弟の晴れの場で目立つことしやがって」  苦虫を噛みつぶしたような顔で呟いた貢を、わたしは苦笑いしながら「まあまあ」となだめる。 お義兄さまも嬉しいんだろうな。自分の弟が、こうして(自分で言うのは何だか恥ずかしいのだけれど)可愛い女の子と幸せを掴んだことが。何たって、お義兄さまにとってもわたしは貢の女性不信を克服させた恩人という認識らしいから。 「――では、続きまして、新郎新婦による〝ファーストバイト〟に移らせて頂きます」  司会のセリフの後、切り分けられたウェディングケーキが高砂テーブルまで運ばれてきた。 〝ファーストバイト〟は元々、花婿が花嫁に「これから先、食べることに困らないようにしていく」という誓いを表した風習。だからもちろん、最初は貢からわたしにケーキを食べさせてくれた。 「んー、美味しい! じゃあ、今度はわたしからね」  花嫁から花婿への〝ファーストバイト〟って、あんまりやらないのかな? でも、わたしはぜひともやりたかった。だって、わたしは食べるのに困ることなんてないけれど、彼にはあるかもしれないから。それに、わたしが彼の生活を支えているのは事実なんだし。 「……うん、うまい! あ、クリームついてますよ」  ケーキの甘さに顔を綻ばせ、わたしの口元についたホイップクリームを指先で拭ってくれる彼。今のわたしたちは、傍から見れば完全にバカップルだ。  ケーキの他に、里歩たちオススメのメニューを美味しく頂きながら、わたしはボソッと呟いた。 「どうせなら、ウェディングケーキも自分で作りたかったなぁ」 「……それはいくら何でもムリだったんじゃないですか? 忙しくてそんな時間なかったじゃないですか」&nb
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ハネムーンへGO! PAGE1
 ――結婚披露パーティーが終わったのは、まだ日も高い午後三時過ぎ。式場スタッフから引き出物(焼き菓子の詰め合わせとファンシーなトレーとコースターのセット)を受け取った招待客が、一人また一人と引き上げていく。 「絢乃、新婚旅行から帰ってきたら、一緒に女子会ランチしようよ。あたしも唯ちゃんも、土日は予定空いてるからさ」  帰り際に、里歩がわたしにそんなお誘いをかけてきた。ちなみに、新婚旅行は四泊五日。帰ってきた翌日は、ちょうど土曜日だ。 「うん、わたしはいいけど……。二人とも、彼氏さんのことは放っておいていいの? 土日くらいしかデートできないんじゃない?」  二人も、彼女たちのお付き合いしている相手もみんな現役の学生さん。それも学校がバラバラなので、授業がお休みの土日くらいしかスケジュールが合わないと思うのだけれど……。 「だーい丈夫だよぉ、絢乃タン。翌日もお休みなんだし、デートは日曜日にできるもん。ね、里歩タン?」 「そうそう。親友と女子会なら、彼氏だって文句言わないって」  二人にここまで押し切られたら、わたしも断るわけにいかない。というか、断るつもりもなかったし。 そこに、さらに貢からのダメ押しが加わった。 「そうですよ、絢乃さん。たまにはお友達と羽伸ばしてきたらいいんです。こういう時間って、子供ができたらなかなか取れないんですから」  子供の話は、ここでは生々しくてまだ恥ずかしいけれど。愛しい旦那さまからのせっかくの厚意なので、甘えさせてもらうことにした。 「……そう? じゃあ、帰ったら連絡するね。その時に待ち合わせ場所とか、行くお店とか相談しようか」 「オッケー! じゃあ新婚旅行、楽しんできてね。お土産楽し
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ハネムーンへGO! PAGE2
     * * * *  ――品川駅前でタクシーを降り、これまたネットで予約済みだったチケットで改札をくぐり、新幹線で新神戸へ向かう。 東海道新幹線では直通で行けないので、新大阪から山陽新幹線に乗り換えて一駅。これは前回、出張で神戸へ赴いた時にもう覚えていた。 「――というか、ハネムーン休暇って十日も要るんですかね?」  「えっ、どうして?」   新幹線の車内で貢がぶつけてきた疑問に、わたしは首を傾げた。 ウチのグループ企業全社では、マックスで十日間のハネムーン休暇が認められている。それは、新婚旅行で海外へ行く人も多いからなのだけれど。 「だって旅行で五日間、お友達とのランチも含めたって六日間でしょう? 予定空いちゃいませんか?」  わたしたちの場合は旅行も国内で四泊五日、それ以外の予定もほとんど決まっていないので、ヒマを持て余すのではないかという彼の考えはもっともかもしれないけれど。 「その後の予定はまた決めたらいいじゃない。このごろ忙しかったから、休暇中に貴方といっぱいデートしたいし。お祖父さまとお祖母さま、パパの墓前に結婚の報告にも行きたいしね。それに――」 「はい?」 「トップであるわたしたちが率先して休暇を取るようにしないと、社員のみんなも休暇取得を遠慮しちゃうでしょ? せっかくある福利厚生の制度なのに」 「まあ……、それはそうですけど」  日本の男女の結婚率が低いのは、ハネムーン休暇を取得しにくい労働環境にある企業が多いことも一因ではないかとわたしは思うのだ。つまり、上の人が「結婚くらいで休暇なんか取るな。怠け者め」と苦々しく思う風潮が、まだ根深く蔓延っているのが
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ハネムーンへGO! PAGE3
 そこまで小さくシャウトしてからハッと我に返り、「……あ、すみません!」と周りの乗客に頭をペコペコ下げてから、彼はトーンダウンして神妙な面持ちでわたしに訊ねた。 「ほら、四月に人事の刷新があったでしょ? それまでの人事はあくまで繋ぎだったから。それでね、山崎さんと広田さんを昇進させたら専務のポストが空いちゃって。誰にお願いしようかママと一緒に考えてたの」 「はぁ、そうだったんですか」 「でね、『会長の配偶者が平社員なのはどうなのかしら?』ってママが言い出して……。『だったら何かポストに就いてもらった方がいいんじゃない?』ってことになって。どうせなら、貢に専務をやってもらおうかって」 「それはつまり、グループや会社の体面のため……ってことですか?」 「……まぁ、そうとも言うよね。でも、貢にとっても悪い話じゃないと思うの。今もらってる月給とはまた別に、毎月役員報酬も入るから。そうね、副社長なら一千万円ってところかな」 「いいいい……一千万んん! 僕の月給が手取りで四十万だから……、二十五倍! うわぁ……」  彼は途方もない金額を耳にして、思わず天を仰いだ。そりゃあ、年収五~六百万円のサラリーマンにとってはとんでもない大金だろう。 「ね? すごいでしょ。それだけの収入があれば、マイカーローンの返済だってあっという間に終わっちゃうし、お給料は貢の好きに使っていいんだから」 「……はあ、それはありがたいお話なんですけど。僕にはちょっと責任が重すぎるんじゃないかと……」  &he
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ハネムーンへGO! PAGE4
「――そういえば、神戸に着く頃は夕食時ですよね。どこで食べるか決めてあるんですか?」  貢に訊かれ、わたしはそこまで予定を決めていなかったことに気がついた。       元々行き当たりばったりというか、行先だけ決めておいてあとは現地に着いてから動く感じの旅行が好きなのだ。 「実は決めてないの。去年の出張の時は確か、水族館の一階にあるフードコートで済ませたけど……。今回は別のところで食べたいよね。でも、わたしも貴方も土地勘ないしなぁ……、あ」 「? どうしたんですか?」  わたしには一人、神戸の市街地で美味しいお店を知っていそうな人物に心当たりがあった。 「そうだ! 川元さんに連絡取ってみる。彼なら神戸に土地勘あるだろうし、食事もご一緒してくれるかも! ……ちょっとゴメンね」  座席での電話はマナー違反なので、わたしはスマホを持つと席を立ち、デッキまで電話をかけに行った。 『――はい、川元です』  わたしが電話をかけた相手は、篠沢商事・神戸支社の川元隆彦支社長。 彼には一年前に出張で開業前の神戸支社を視察に行った時、すごくお世話になった。オフィス内の案内もしてくれたし、その後には観光にピッタリのオシャレな水族館を教えてくれた人だ。まだ三十代半ばでお若いけど、もうすでに〝頼もしいリーダー〟という感じの人だと思ったのを覚えている。 「川元さん、会長の篠沢です。お久しぶりです。昨年の夏はお世話になりました」 『いえ、こちらこそ。――会長、ご結婚おめでとうございます。今日は式に出席できなくて申し訳ありませんでした』 「ありがとうございます。出
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